研究概要 |
4.2Kから300Kの温度範囲で,強磁場を印加したバルクInSbおよびHg_<1ーx>Cd_x試料について印加磁場Hに垂直な電流密度Jの電流を流してJ×H力による電磁力励起で非平行な電子と正孔とを励起し,そのバンド間再結合放射に基づく長波長半導体レ-ザ-の研究を行った.その結果,hω_C>kTの条件が満たされる量子極限状態では,以下に要約するような顕著なレ-ザ-作用が生じることが明らかにされた. 1.量子極限状態では,例えば80KのInSbに7Tの磁場を印加すると,J【approximately equal】20A/cm^2という極めて小さな電流密度で誘導放射が生じることが発見された 2.量子極限状態では,J>J_Cの電流密度で励起されたほとんどの電子と正孔とは,その最低のLandau準位をほぼ完全に埋め尽くようになり,電子と正孔の完全取転分布状態が実現される.この場合,k_z=0のバンド端における垂直遷移に対して誘導放射の利得係数g(ω,H)がω_Cτ→∞で無限大に発散し,この特異性のため,量子極限では極めて小さなJ_Cの値で誘導放射が生じることが明らかにされた. 3.放射光は一般に楕円偏光性を示すが,光共振器中で繰り返し増幅を受けるような場合には,磁気量子数Mに関して,ΔM=±1の選択則に従うextraordinary modeが選択的に増幅される. 4.室温のInSbにH【less than or equal】14Tの磁場まで印加し,低励起状態での実験を行った.cw動作では誘導放射が観測されないが,明瞭なバンド間Landau放射が観測された.これからω_g=0.18eV,m^*_1(0)=0.015m_o,g(0)=ー47,等の室温のバンドパラメ-タ-の値を決定することができた. 5.組成比x=0.2のHg_<1ーx>Cd_xTeについても室温,80K,20Kで実験を行い,電磁力励起により非線形なバンド間赤外放射(ピ-ク波長λ_o〜8.5μm)が生じることを確かめた. 6.Hg_<0.8>Cd_<0.2>Te試料での放射の内部量子効率はInSbのほぼ1/20以下であり,温度低下とともに発光効率が低下することも明らかになった.また80Kにおける放射再結合の時定数は1.4μsであった. 以上の研究から,量子極限における電磁力励起Landau放射は,tunable長波長半導体レ-ザ-の高効率の動作原理とした有効であるのみならず,その放射スペクトルの解析からバンドパラメ-タ-の値を決定し得る極めて有力な方法であることを明らかにした.
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