研究概要 |
光パルスシンセサイザの原理による超高速波形合成に必要な数十テラヘルツにおよぶ超広帯域光を,電気的な制御をすることによって発生させることを目的として研究を行った. まず,より高効率の電気光学変調器の開発をめざして研究を進めた.マイクロ波の定在波モ-ドを利用した共振電極形電気光学位相変調器/偏向器を開発し,16GHzにおいて大振幅位相変調/光偏向を行うことに成功した.さらに変調器を改良し,マイクロ波の高次共振モ-ドを利用することによって,動作周波数において光波とマイクロ波の速度整合を達成することに成功した.これにより,バルク形の電気光学結晶を用いても,変調波と光波の相互作用長を十分に長くすることができるようになり,マイクロ波/ミリ波領域で動作し,かつ,レ-ザ共振器内にも挿入可能な,光学的に低損失な電気光学変調器が構成できることが明かとなった.実験においては,変調周波数16GHzで位相変調指数6.1π,0.7THZのサイバンド広がりを得ることに成功した. 次に,Ti:サファイアレ-ザとの組み合せによる変調サイドバンドの拡大実験を行った.このため,新たに電気光学位相変調器を試作して用いた.複合共振器構成のTi:サファイアレ-ザの副共振器内に試作変調器を挿入し,主共振器の往復に同期した周波数で変調することにより,レ-ザの帯域を利用することによってサイドバンドの帯域を拡大した.この構成は,複合共振器レ-ザの位相変調によるモ-ド同期に相当する.実験の結果,レ-ザのモ-ド間に位相同期がかかり,出力波形は220MHzで繰り返すピコ秒光パルス列となることが確認できた.当初試作したマイクロ波変調器を用いて実験を行うには至らなかったため,スペクトル帯域は予想値には及ばなかったが,本方式によるフェムト秒波形合成の可能性を示すことができ,今後が期待される.
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