研究概要 |
宇宙往復輸送システムの開発計画が具体化するにつれて,大気圏再突入時の空力加熱による温度上昇から機体一次構造を保護するための熱防護システム(TPS)に関する研究が必須の課題となってきた.この熱防護システムの候補の一つとしてチタン合金の箔材を凹凸形状にディンプル加工したものと,平らな箔材により多層壁構造を形成する,いわゆるマルチウォ-ル型金属熱防護システムの開発が進められている.本研究ではこのマルチウォ-ル型金属TPSが加熱を受けた場合の挙動を調べるための基礎研究として各種環境下でのTPSの熱的および機械的な性質を明らかにした.まず熱防護システムとしての遮熱性,逆に言えば伝熱特性を検討した.一般に曲面形状のディンプルを対象とし,本来板厚方向に積層を成し面内でも異方性を有するTPS板を,巨視的に一様な均質板とみなし内部での伝熱が熱伝導のみによると考えた場合の熱伝導率,すなわち等価熱伝導率の定式化を行った.この等価熱伝導率は温度の関数であるのみならず,板厚や積層数などの各種パラメ-タの依存するため,これらによる等価熱伝導率の変化を調べ、TPSの遮熱性能に関するパラメ-タスタディを行った.従来,伝熱特性については具体的なTPSのモデルについて,特定の条件下での値を計算し,誠作されたものによる測定値との比較を行うことは成されているが,本研究のように各種パラメ-タの影響を整理したものは見当たらない.次に,この等価熱伝導率を用いて,機体一次構造まで考慮した非定常熱伝導解析を行うとともに,その結果に基づいて,ディンプルシ-トに発生する熱応力解析を行った.等価熱導率,比熱および密度などの温度依存性を考慮するため,計算には有限要素法を用いた.また境界条件はTPSパネル面内の熱膨張を拘束した場合と許容する場合について考え,前者では非常に大きな熱応力を生じることを明らかにした.
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