研究概要 |
1.高血圧に対するラット動脈壁の力学的適応 血管壁厚と血圧の間に強い正の相関があったが,円周方向応力は術後2〜16週では血圧によらず,ほぼ一定の値となった.一方,増分弾性係数(H_<00>)は術後2〜8週では血圧と正の相関があったが,術後16週では血圧によらずほぼ一定の値となった. 2.動脈硬化家兎動脈壁の力学的性質 脂肪沈着面積比A_Sが80%以下の血管では,力学的性質に有意な変化は現われなかった。一方,A_Sが80%を越えた血管の中には,H_<00>が有意に高い値を示す血管が20%あり,これらの血管では壁内に著しい石灰沈着が見られた. 3.家兎膝蓋腱の力学的性質に及ぼす除負荷,並びに再負荷の影響 除負荷により引張強度や弾性係数が著しく低下し,引張強度は2週後には正常群の10%になった.また,再負荷によって引張強度や弾性係数は徐々に増大し,引張強度は2週間の除負荷を行った後6週間の再負荷を行うと正常群の50%にまで回復した. 4.家兎膝蓋腱の力学的性質に及ぼす過負荷の影響 力学的特性に有意な変化は現れなかったが,断面積が増大し,例えば6週間の過負荷によって手術直後の断面積の150%になった.このことから,過負荷によって膝蓋腱全体が破断するときの最大荷重が増大したことになる. 以上の実験結果から,動脈や膝蓋腱などの生体軟組織は,その力学的性質や形態を変化さらることにより,力学的環境の変化に適応していることが明らかになった.
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