研究概要 |
炭素繊維強化複合材料は,比強度に優れ,しかもテイラリング可能な高強度機能材料であるが,高度に不均一かつ異方的な微細構造のため,その変形と損傷・破壊機構は極めて複雑である。本研究は,この問題を損傷力学的な観点から取扱い,非弾性変形機構,損傷発生・発展機構を検討した。 3年間の成果をまとめると, 1)引張応力あるいは圧縮応力のみの繰返し負荷に比べ,引張・圧縮の両振り繰返し負荷によって顕著な非弾性変形挙動が現われる。特に,圧縮負荷域での特異な変形は,疲労に伴って材料内部に発生する層間はく離に起因することが明らかとなった。 2)材料の巨視的力学特性,例えば弾性率は,マトリックスき裂の発生によってはあまり影響を受けず,積層構造の損傷,即ち層間はく離の影響が非常に大きいことを,応力-ひずみ関係と顕微鏡観察結果の比較検討から明らかとした。 3)軸力-ねじり複合応力の繰返し負荷試験法ならびにひずみの評価法を検討した。軸力-ねじり負荷における応力-ひずみ関係は塑性理論における流れ則により表現できることを明らかにした。 4)変動応力下での疲労特性を検討した。応力履歴依存性のあることを明らかにした。特に,繰返し負荷によるひずみ硬化に顕著な影響がある。 5)材料の応力-ひずみ関係および材料内部における応力分布を有限要素解析によって明らかにした。さらに,これらの解析にもとづいて材料の最適積層構造を自律的に求める新らしい有限要素解析法(思考型有限要素法)を開発し,これの有用性および適用性を明らかにした。
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