研究概要 |
光集積回路においては,基本要素である光導波路の外にも様々な光機能素子が集積化されるが,一般に光素子はその機能に応じて様々な材料が用いられるので,異種材料の集積法が必要不可欠になる.その一構成法として,報告者は本研究の開始前に,基板に設けた段差の垂直面へ多層膜フィルタを選択的にモノリシックに形成する方法を開発し,光検出器と多層膜フィルタを集積化した分波・受光集積素子を試作してその基本動作を確認した.しかしながら,基板底面が平坦ではないので光導波路をモノリシックに集積化できず,また,垂直面上に形成した膜の屈折率と膜厚の製作精度が不十分なため,製作した素子の分波波長特性が設計値からずれており,高性能デバイスが得られていなかった. そこで本研究では,まず基板に垂直段差面を形成する際のエッチング条件を検討し,段差底面の平坦化を達成して光導波路のモノリシック集積化に成功した.さらに,垂直面選択成膜法によって形成された膜の膜厚制御精度の検討のため,簡単な2層膜フィルタを設計し,誘電体多層膜フィルタ,光検出器および光導波路を集積化した分波・受光モノリシック集積素子を試作した.そして,この集積素子の分波・受光特性を測定し,波長フィルタ特性を得てその基本的動作を確認するとともに,分波中心波長の設計値と実測値の差から,垂直面上の膜厚制御精度を見積もった.次に,これまでの高周波スパッタ装置を用いた垂直面選択成膜法では,垂直面上の膜の上部に鋭い傾斜面が現れる点と,基板段差面の上部の角がエッチングされて変形するという問題があった.そこで本研究の後半では,2つのイオン源を用いたイオンビ-ムスパッタ装置を用いて,この問題の解決を試みた.その結果,1台のイオン源でイオンビ-ムスパッタ成膜を行い,もう1台のイオン源を基板へ垂直に照射することで,基板垂直面へ選択的に薄膜を形成することに成功した.
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