研究概要 |
強い電子ビームを非磁化プラズマ中に入射するとビーム・プラズマ不安定性により大振幅の静電波が励起されプラズマは乱流状態になる。本研究は,大強度電子ビーム・プラズマ系ではどのような乱流状態が実現されているかを調べるための最初のステップとして,乱流電場の大きさを分光的に測定する手法を確立することを主たる目的として行われた。成果は次のようにまとめられる。1.BarangerとMozerのプラズマ・サテライト法及びシュタルク・シフトの測定のための現有のジャーレル・アッシュ0.5mのモノクロメーターの8ツャンネルのポリクロメーターへの改造を完成した。各チャンネルの分解能は0.3Aで,カバーする波長範囲は最小3.2Aである。2.真空容器中に20mTorrのヘリウム・ガスを充填し,レール銃によりカーボン・プラズマを生成し,その中に大強度相対論的電子ビームを入射し,Hel447.2nm及び492.2nm線の近傍にそれぞれ禁制線447.0nm及び492.0nmが現れることによりプラズマが乱流状態になっていることを確認した。3.Hel501.5nm及び667.8nm線のシュタルク・シフトの測定より,110〜125kV/cmもの強さの電場もプラズマ中に存在すること,電場の分布はガウシアンであることが分かった。4.電子ビームが終わった後でも乱流状態が約1μsの間続くことが分かった。5.分光測定の結果は,プラズマ中には密度が薄く振動電場が強い領域であるキャビトンが幾つも生成・崩壊・バーンアウトしながら存在し,且つ,乱流はキャビトン群とバックグランドの弱い波群とからなっているとする乱流2成分説で説明できそうである。6.レーザー誘起螢光法に用いる色素レーザー励起用の窒素レーザーを製作し色素レーザーを発振させた。7.ビーム電子密度とプラズマ電子密度の比が約0.01を越えると大出力マイクロ波放射及び電流増幅現象が現れるが,分光測定ではこの密度比依存性は見られなかった。
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