研究概要 |
情報学において解決すべき多くの最適化問題の中から、以下の課題について、主にアルゴリズムの立場から研究を行った。 1.グラフ・ネットワークにおける最適化:グラフ・ネットワークの基本問題の一つである最小カット問題に対し,まず,与えられたグラフGを互いに素な森に分割する線形時間O(n+m)(但し,nは節点数,mは枝数)のアルゴリズムを与える事に成功し,続いてその結果を用いてO(mn+n^2logn)時間でネットワークの最小カットを求めるアルゴリズムを得た。 2.非線形システムの最適化:目的関数や制約条件に含まれる非線形性があまり強くなく,しかも疎構造をもつ問題に対し,疎構造を保ったまま大規模な問題を解く事をねらって,一つの逐次線形化アルゴリズムを提案した。更に,微分可能でもなく凸性も持たない非線計画問題について,ある分解構造の下で逐次2次計画アルゴリズムを与えた。 3.確率システムの最適化:多数の確率的サーバーが並列に動作するモデルにおいて,到着するジョブをサーバーに割り振る問題を考え,待ち行列長の情報が得られていないという前提の下では,巡回的割り付けが平均コストを最小にするという意味で最適である事を示した。 4.分散システムの最適化:分散システムの相互排除の一つの実現法であるコテリーの概念をとりあげ,その数学的性質をブール代数を用いて明らかにした。次にその結果を用いて,故障する可能性のあるリング状のネットワークで,可用性を最大にするコテリーを求める多項式時間アルゴリズムを与えた。 5.演繹データベースにおける最適化:複数個の結合演算を実行する際の最適順序を求める問題を考察し,比較的簡単な場合でもNP困難ある事を示すと共に,多項式時間で解けるいくつかの場合も与えた。また閉包演算に要する計算量の近似的評価,同世代問題に対する新しいアルゴリズムを与えた。
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