研究概要 |
琉球列島の主要な諸島の海岸地形を調査し,以下の知見を得た。 1)奄美大島ではビ-チロックの高度の比較から,約3000年前の西側への傾動運動を把握した。また笠利半島の東海岸一帯に分布する津波堆積物を識別し,約2000年前と約500年前の津波発生時期を明確化した。 2)徳之島では現成も含めて3段の地形面を区分し,同島の完新世隆起運動が西方の沖縄トラフの拡大運動によることを究明した。 3)沖永良部島では津波堆積物と推定したサンゴ化石の年代値から,約4500年前と約600年前の津波発生時期を推定した。 4)沖縄島では約3000年前頃の津波の時期を推定した。 5)渡嘉敷島および渡名喜島では礫岩ビ-チロックとサ-フベンチの調査から,約3000年前頃の海面低下を推定した。 6)阿嘉島および座間味島では従来考えられてきた「後期完新世の海面安定期」に修正を加え,小規模な海面変動を識別した。 7)久米島では3段のサンゴ礁面,3段のノッチ,および3列の浜堤列を識別し,2度にわたる海面低下現象を把握した。それらは約1600年前および約600年前の地震性地殻変動によるものと考えられる。 8)以上から琉球列島の完新世地殻変動域は,(1)沖縄トラフの拡大運動による地殻変動域……徳之島・沖永良部島・久米島・渡名喜島,(2)フィリピン海プレ-トの沈み込みによる地殻変動域……奄美大島・沖縄島,(3)沖縄島と宮古島を境する地質構造線(慶良間海裂)による地殻変動域……渡嘉敷島・座間味島・阿嘉島,に大きく区分される。これらは,傾動運動,地震性地殻変動,あるいは津波を伴なう地殻変動として現われている。
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