研究概要 |
本研究では、溶液中での界面反応と固体表面の電子構造との相関を明らかにするための新しい分光法の開発を目的に、電荷移動反応によって誘起される溶液内金属表面からの微弱発光について詳細な実験を行うとともに定量的な解析を行い発光機構の解明を試みた。具体的には、以下の4点について検討し、発光過程に金属のバルクバンドが関与していることを明らかにした。 1.酸化還元電位の異なる3種類の化学種を用いて、種々の金属蒸着(Au,Ag,Pt,Pd)からの発光スペクトルの測定を行い、注入電子エネルギ-及び金属の種類による放出光子への効果を検討した。 2.溶媒和電子を用いた全く新しい電子注入ー発光誘起手法を考案し、放出光子に対しさらに定量的な解析を可能とし、注入電子の緩和過程を検討した。その過程において、金属の電子状態のみならず溶媒和電子の溶液内エネルギ-分布に関する検討も行った。 3.以上の結果から得られた金属内での電子注入過程を定量的に扱い、光子放出を定式化したモデルを提案した。また本モデルに基づく発光スペクトルのシミュレ-ションを行い、実験結果との比較からモデルの妥当性について詳細な検討を行った。 4.放出光子と金属の電子準位の相関をより明らかとする為に、溶媒和電子を電荷注入種として規制された表面である金属単結晶表面からの発光を偏光し強度の異方性を測定し、関与する電子準位との対応を検討した。
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