研究課題/領域番号 |
02453006
|
研究種目 |
一般研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
物理化学一般
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菅原 正 東京大学, 教養学部, 教授 (50124219)
|
研究分担者 |
泉岡 明 東京大学, 教養学部, 助手 (90193367)
佐藤 直樹 京都大学, 化学研究所, 教授 (10170771)
|
研究期間 (年度) |
1990 – 1992
|
研究課題ステータス |
完了 (1992年度)
|
配分額 *注記 |
6,200千円 (直接経費: 6,200千円)
1992年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1991年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
1990年度: 4,300千円 (直接経費: 4,300千円)
|
キーワード | プロトンダイナミックス / 誘電性 / 互変異性 / 相転移 / X線構造解析 / 固体高分解能NMR / 誘電率測定 / 分子間水素結合 |
研究概要 |
我々は前年度までに、プロトン移動と連動した互変異性を分極反転機構とする新規な有機分子性誘電体を見いだした。本年度はこのような誘電挙動の一般性を検証すべく,3ーヒドロキシエノンのシス形を部分骨格として持つナフタザリン(1)及び9ーヒドロキシフェナレノン(2)の誘電応答について検討を行った。 ナフタザリン(1)の結晶多形B、Cでは共に互変異性が低温で凍結することが知られていたが、その機構については明らかにされていなかった。われわれはこれを誘電性相転移に基づくものと予測し、これらの結晶の誘電率の温度変化を測定した。その結果、共に室温付近では常誘電性を示すことがわかった。この結果は、互変異性に基づくπ系の分極反転が誘電性に結び付くことの一般性を示したといえる。また、結晶Cの誘電率は100K付近で急激に減少し、明確な反強誘電性相転移が認められた。これより、ナフタザリンにおける互変異性停止の機構はπ電子系の双極子相互作用による誘電性相転移に基づくものであることが証明された。 9ーヒドロキシフェナレノン(2)は4つの結晶相を持ち、X線構造解析によると255K以下の低温相(相1)では分子は非対称に観測される。一方室温相(相2)では分子は対称的に観測されると共に、分子配列にディスオーダーが認められる。固体高分解能 ^<13>CNMRによる検討の結果、相1では互変異性過程は凍結しているが、一方相2では速い互変異性が起こっていることが判明した。 2の誘電測定を行った結果、1とは極めて異なる応答が観測された。誘電率は相1では極めて小さく温度変化を示さないが、相転移に伴い急激な立ち上がりを示す。また相2の温度領域での誘電率は顕著な異方性および周波数依存性を示す。これらの結果は、誘電応答を与えている動的過程が互変異性とは異なる過程であることを示唆している。結晶中のディスオーダー構造から考えると、この動的過程は分子の120度ジャンプ運動に帰属される。すなわち分子のジャンピング運動に伴い分子長軸方向の大きなダイポールモーメントが反転することになり上述の誘電応答を与えたと解釈できる。 以上、3ーヒドロキシエノン系の誘電応答を検討し、互変異性に基づくπ系の分極反転が誘電応答を示すことの一般性、および相転移との関連を示すことができた。また2についてはこの手法により結晶内の分子のジャンピング運動を検出することができた。
|