研究概要 |
有機化学で中心的な役割をなしている炭素と同族の14族元素(Si,Ge,Sn,Pb)と隣接の15族元素(P,As,Sb,Bi)を取り上げ、これらの高周期典型元素を骨格に化合物の特性と効果的な利用方法を理論的に研究した。従来の化学結合概念や反応則は炭素化合物を中心に確立されたものであるので、高周期元素化合物にも同様に適用できるかどうかの限界をまず明らかにした。そして、周期と族の違いによりどのような新規な特性が得られかを系統的に解明することにより、これまでの炭素化学ではみられない新しい構造、物性、機能をもつ化合物やクラスタ-を理論と計算により実験に先だって予測した。そして、高周期典型元素の特性を利用した分子設計のために有用な一般則の確立を試みた。 不飽和結合化合物:エレチンやベンゼンの骨格炭素を高周期典型元素で置き換えると電子の非局在化に有利と考えられる平面構造をとらずラジカル性をもつ非平面の折れ曲がり構造をとる。しかし、置換基の電子的効果と立体効果により、高周期典型元素を骨格にもつ不飽和化合物の構造と特性を制御できることを見いだした。 多面体化合物:高周期典型元素を骨格にもつ多面体は大きく低歪みになる。この低歪み化は、骨格元素が高周期の元素になるほど、また多面体を構成する四員環の数が多くなるほど顕著になる。この性質は、分子設計上非常に有用である。しかし、三員環を数多く含むときには、低歪み化はほとんどなくその弱い結合性のために結合の伸張あるいは切断がおこる。しかし、この欠点はδdonor性の大きいあるいはπacceptor性の大きい置換基の選択により制御できることを提案した。また、フラ-レン類(C_<60>やC_<70>)の高周期元素類似体の特性を明らかにし、興味ある物性が期待される一連のかご形の球状クラスタ-を提案した。
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