研究概要 |
遺伝子DNAの特定位置で効果的にDNA鎖を切断する分子を開発できれば,その応用範囲はきわめて広い,我々は任意の塩基配列でDNAを特異的に切断する人工制限酵素の開発を目指して,まず効率の良いDNA切断分子をデザイン・合成し,これにリンカ-を介して二重鎖DNAを特異的に認識する天然,ドラッグまたはDNAプロ-ブに連絡し三重鎖形成を利用してDNAを特異的に切断する人工制限酵素を構築する試みを行った。 天然抗ガン剤であるエスペラミシンのモデルであるエンインアレン系の化合物を合成し,これが室温で芳香種ビラジカルを発生し,DNA糖鎖からの水素引き抜きによりDNAを切断する事を見い出した。この事実はこの分野の研究に大きな刺激を与え,その後数多くのエンイシアレン系DNA切断分子が世界および我が国で合成された。また,抗ガン剤ネオカルチノスタチン(NCS)のDNA切断の機構を明らかにし,特にNCSのチオ-ルによる活性化機構に関して新しい事実を発見し,中間体と目されるエンインクムレン系化合物の合成にも世界で初めて成功した。 次に,光照射で駆動するDNA切断分のデザインを行った。366nm以上,光で効率良く水酸ラジカルを発生するナフタルイミド系過酸化物を合成し,これを“光ファントン試剤"と命名した。この分子は,光照射によりDNAのーGGーサイトを特異的に切断することが判明した。この分子はDNAの切断のためだけではなく,蛋白質のクロスリンクや酸化試薬として広く利用できることが明らかとなった。この分子をDNAバインダ-に連結することにより,より高層に塩基配列特異的な人工制限酵素として機能することを明らかにした。
|