研究概要 |
この二年間の研究成果として複核錯体形成能のある配位子の合成とそれらを含む金属錯体を多数得られた。配位子は、テトラケトン(ジケトンを背中合わせに二個結合させた構造をもつ)類で、これらは架橋四座配位子となりうる。新化合物として得られたニッケルおよび銅(II)混合配位子は、約25種類である。各種ジケトン(dike)あるいはテトラケトン(teke)とNーアルキルジアミン(diam)やトリアミン(triam)あるいはテトロアミン(tetam)を相手配位子として含む混合配位子錯体で、一般式は次のようである複核錯体として得られたものは架橋配位子としてテトラケトンの他に炭酸イオン(CO_3^<2ー>)、シュウサンイオン(C_2O_4^<2ー>)擬ハロゲン化物イオン(X)_2^<2ー>を含むものも得られた。特に、炭酸架橋錯体は、空気中のCO_2を取り込んで錯体を形成する点で今後興味が持たれる:単核錯体ーM(dike)(diam)X,M(dike)(triam)X,M(dike)(tetam)X;複核錯体ーM_2(teke)(diam)_2X_2,M_2(teke)(triam)_2X,M_2(CO_3)(dike)_2(diam)_2,M_2(C_2O_4)(dike)_2(diam)_2,M_2(X)_2(dike)_2(diam)_2;where M=Ni(II),or Cu(II),X=B(Ph)_4^ー,ClO_4,NO_3^ー,halide or pseudohalide anions。 これらの錯体が安定に存在できる要因は、主に立体効果である(立体障害の大きなポリアミンとスマ-トなジケトンあるいはテトラケトンの組み合わせが好都合で、あたかも鍵と鍵穴の関係で安定化されている)。さらに好都合なことは、これら二種類の配位子のつくる配位子場強度がちょうどスピンクロオ-バ-付近にあることと、その錯体が多数の有機溶媒に可溶である。これらの錯体の構造は、用いたジケトンの電子的効果、Nーアルキルーポリアミンの立体効果、あるいは対イオンの配位能に依存して変化することが明かとなった。また、得られた錯体は、溶液中で興味あるクロモトロピズムを示すが、これは用いた溶媒のドナ-性、アクセプタ-性による。結晶状態でのこれらの錯体の磁化率の測定結果から弱い反強磁性相互作用がみられ、これは用いた架橋配位子に依存することが明らかとなった。
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