研究概要 |
ガラス繊維強化プラスティクスの接着接合に際し、(a)接合面を平滑に仕上げたもの、(b)レ-ザ-照射によりエポキシ樹脂のみを蒸発させ、接合面のガラス繊維を露出させたもの,(c)接合面を硫酸処理し、ガラス繊維を露出させたもの、(d)硫酸処理後接合面をこすり合わせ,露出した繊維をより一層毛羽立たせたもの,の4種類の平面突合せ接着接合継手を準備した。接合に用いた接着剤はStycast1266(エポキシ系,グレ-スジャパン社製)である。これらの継手を293K,77K,4.2Kで引張り、各温度での接着接合強度を評価した。その結果,(a)の継手でも極低温下で接合強度は上昇するが,その値は接着剤自体の強度よりかなり低く、破壊は接着層と被接着材との界面で生じた。(b),(c)の継手のように、接合面上で強化繊維を露出させた状態で接合した場合にも,極低温下での接合強度は上昇し,かつ(a)の継手よりその強度は高くなることが明らかになった。(ただし、(a)の継手に比べ強度分数散は大きくなった。)これは露出繊維がわずかではあるが荷重伝達に寄与するためである。(d)の継手の極低温下での強度は,接着剤自体の強度を上回る結果となった。破面観察および接合部断面観察結果によると、接着層内で繊維同士がからみ合い,強化繊維自体も破壊していることが明らかになった。このことから,繊維を有する複合材料の接着接合にあたっては、強化繊維をいかにからみ合わせながら接合するかが基本的に重要な事柄であることがわかる。 スカ-フ角度を付けた継手の場合,スカ-フ角度を120度,90度,60度と小さくするにつれて接合強度は上昇した。これは接合面上で尊断応力成分が生じ,その成分が大きくなる程継手強度は上昇することを意味している。加工精度が充分に保証されるならば,スカ-フ形状でかつ接合面の強化繊維を毛羽立たせた状態で接合することにより、極低温下で優れた強度特性を有する接着接合継手が得られることになる。
|