研究概要 |
本研究は,オレアンドマイシン(1__〜)を対象物質として選び,従来の生合成中間体を培養液中に見いだす方法とは異なり,生合成中間体と予想される種々のアグリコンを合成した後,変異菌により目的の天然マクロリド抗生物質1__〜に変換できるか否かを調べることにより生成過程を生物有機化学的に明らかにしていくことを第一の目的とし,平成2年度,変異菌の育成と同時にその目的を達成した。平成3年度は,非天然型のアグリコンを合成した後,変異菌により表換し,有用な非天然型マクロリド抗生物質を得ることを目的とした。まず、1__〜から(8R)ー8,8aーデオキシオレアンドライド(2__〜),(8R,9S)ー9ージヒドロー8,8aーデオキシオレアンドライト(3__〜),(9R)ー9ージヒドロー8,8aーデヒドロー8,8aーデオキシオレアンドライド(4__〜),8,8aーデヒドロー8,8aーデオキシンオレアンドライド(5__〜)オレアンドライド(6__〜)などを合成した。変異菌はアグリコンまでの生産能力は欠損しているが適当なアグリコンを与えると,1__〜に変換できるので,1__〜の生産菌から人工的に育成した。上述のアグリコンを取り込ませた結果,すべての1__〜に変換され,その生産量から生合成過程の最終工程は2__〜→3__〜→4__〜→5__〜→6__〜→1__→の順であることが初めて示唆された。1__〜のエポキシ環は構成糖が導入される前に形成されていることが示された。同様にして,非天然型アグルコンである(8S)ー8ーヒドロキシー8ーヨ-ドメチルオレアンドライド,8ーフルオロメチルオレアンドライド,9ーブロモオレアンドライド,9ーアミノオレアンドライドなどを合成し,変異菌による取り込み実験を行ったが,相当する新現マクロリド抗生物質を与えなかった。さらに基質特異性の低い変異菌の育成が今後の課題であるが,この手法により,抗生物質の生合成過程を生物有機化学的に明らかにすることができることを例証した。
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