研究概要 |
本研究ではヘテロ原子の求核活性種や親電子活性種としての反応特性を解明するとともに、親電子的付加反応におけるオレフィンのジアステレオ面選択に及ぼすヘテロ原子効果の本質を解明することを目的として以下の結果を得た. 1.オレフィンに対する親電子付加反応におけるジアステレオ面選択性を制御する置換基としては,水酸基,ハロゲン,アルキル(アリ-ル)基が従来検討されている.我々は置換基の電子的効果を系統的に検討するのに最も適したものとしてアリルアミンのアミノ基を対象とした.しかし,基質となる非対称なアリルアミンを立体選択的に得る満足すべき合成法が無い為,先ずその合成法を種々検討し,カルバミン酸0ー2,3ーブタジエニルの銀塩を触媒として用いる分子内アミノ化反応を開発した。1,4ー二置換ー2,3ブタジエニルの場合は生成物として四種類の4ービニルー2ーオキサゾリノンが可能であるが,その内二種のみを生成した。パラジウム(II)塩は上記反応には触媒不活性であったが,アリルクロリド存在下には活性を示し,4ー(1'ーアリル)ビニルー2ーオキサゾリジノンを立体化学的に単一物として,かつ高収率で与えた. 2。ジアステレオ面選択性を検討する目的でNー置換3ーアミノー4ペンテンー1ーオ-ルの沃素環化におけるシスおよびトランス2ー沃化メチルー3ーアミノテトラヒドロフランの生成割合を検討した。窒素上の置換基としてアセチル,ベンゾイル,pーニトロベンゾイル,トリフルオロアセチル,トルエンスルホニル,メタンスルホニル,トリフルオロメタンスルホニルと,その電子吸引性を徐々に増してゆくと,沃素環化の反応速度は、この順に低下するが、立体選択性はこの順に,トランス選択的反応からシス選択的な反応へと移行することが明らかとなった。この結果をもとに、機構的に詳細な検討が可能となった。
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