研究概要 |
農耕地土壌のリン蓄積に関し,次の3点を明らかにした。 1.火山灰土壌のリン蓄積機構を明らかにするために黒ボク土のリン酸イオン収着・溶出に伴う物質収支物質収支を明らかにした。 土壌試料は活性アルミニウムの組成が異なるアロフェン質黒ボク土,非アロフェン質黒ボク土の粘土画分を用いた。これらの試料ににリン酸イオンを収着させ,その物質収支を測定し,リン収着に伴うこれらの土壌の化学性の変化を測定した。次に,リン収着後の溶液をリンを含まない溶液と交換し,収着リンの一部を溶出させ,これに伴う物質収支と固相の化学性の変化を明らかにした。 2.沖積土中に多量のリンが蓄積する場合を想定し,その機構を明らかにした。沖積土は火山灰土壌と異なり,結晶性粘土鉱物に富み,活性アルミニウム,鉄含量は少ない。そのため,多量のリンが添加される場合には活性アルミニウム,鉄以外に交換性カルシウム,マグネシウムなどの交換性イオンとリン酸イオンの反応が起こる。そこで,リン酸吸収係数測定に使われる2.5%リン酸アンモニウム液(pH7.0)を用いと,沖積土の交換性カルシウム,マグネシウムとリン酸イオンからCaHPO_4・2H_2OとMgNH_4PO_4・6H_2Oの生成することが明らかになった。 3.鉄型リンの還元による溶出特性もモデル反応系を用いて検討した。試料として低結晶性の和水酸化鉄ゲルを用いた。キレート能を合わせ特つ還元剤はキレート能を持たない還元剤に比べてリン溶出能の高いことが明きらとなり,土壌が湛水されたときに単に還元状態となるだけでなく,キレート能のある物質が微生物または作物から放出されると蓄積リンの溶出がより促進される可能性が示唆された。
|