研究概要 |
無気門亜目のコナダニ類19種を材料に、従来、警報フェロモンや集合フェロモンの研究および分泌物成分の天然物化学を遂行してきた。本研究費では最近判明したコナダニ類性フェロモンの有機化学的解明を主として行った。また一方では従来の研究も続行した。 ゴミコナダニの1種Caloglyphus polyphyllaeですでにβーアカリジア-ルと私が同定した性フェロモンは、その後雄自身にも存在し、続けて同定出来たムギコナダニAleuroglyphus ovatusの性フェロモン(2ーヒドロキシー6ーメチルベンズアルデヒド)も雌ばかりか雄自身に大量に存在した。そこで生物学的に2種類の性フェロモンが存在すると報告のあるアシブトコナダニAcarus siroの同属種オソアシブトコナダニAimmobilisを材料に生物試験法を工夫して、両性フェロモンを同定することに成功した。雄興奮性の性フェロモンが2ーヒドロキシー6ーメチルベンズアルデヒド、雌誘引性の性フェロモンが雄に局在する炭化水素であった。おそらく他のコナダニ類もこのような2種の異なる機能の性フェロモンで、生殖機構が成立していると考えられ、今回の研究期間では解明できなかった経済的・衛生的に重要なケナガコナダニやヒョウヒダニ類などを中心に今後もさらに研究を続けたいと考えている。 一方ロビンネダニRhizoglyphus robiniに新規モノテルペンを発見し、ロビナ-ルと命名し、構造決定した。さらに同種から抗菌活性を示す新規置換安息香酸のエステルを同定した。この置換安息香酸は別種ゴミコナダニ類にもメチルエステルとして存在するため、リゾグリフィン酸と命名した。コオノホシカダニLardoglyphus konoiの集合フェロモンであるラルドルア-「蟻酸R,R,R,Rー1,3,5,7ーテトラメチルデシル」の絶対構造異性体間での活性を纏め、イエニクダニGlycyphagus domesticusとバイチヒゲダニHistiostoma laboratoriumの警報フェロモンを同定した。
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