研究概要 |
腸管吸収速度が速いなどの栄養学的に優れた機能を有すると考えられる必須アミノ酸を含むオリゴペプチドを酵素法により効率的に合成する方法について検討し、以下の成果を得た。固定化thermolysin(TL),α-chymotrypsin(CT)およびpapain(PP)の有する縮合または転移作用を利用して、有機溶媒または有機溶媒/緩衝液系で各種のジおよびトリペプチドを合成する方法を開発した。例えば、固定化TLとCTを直列に連結した2固定化酵素カラムでZ-GFLNH_2を220時間にわたり80%以上の高収率で連続合成することに成功した。本研究で合成した必須アミノ酸およびそれに準ずるヒスチジンを含むジおよびトリペプチドは以下の通りである。カッコ内は使用した酵素、その作用および収率を示す。Z-K(Z)IOMe(TL;縮合,約100%),Z-TWOEt(PP;転移,73%),Z-TWVNH_2(CT;縮合,約100%),Z-LFOMe(TL;縮合,約100%),Z-MLFOMe(TL;縮合,約100%),Boc-H(Tos)VOEt(PP;縮合,91%)。また、基質の有機溶媒と水相への分配特性により、水分濃度の増加に伴い物質移動抵抗が急激に増加する場合があることを認めた。さらに、オピオイドペプチドであるLeu-enkephalinの前駆体(Z-YGGFLOEt)を、構成アミノ酸誘導体より、CT、TLおよびPPを用いて合成する手順を提出し、その実現性を実験的に検証した。塩基性アミノ酸(K)からなるジおよびトリペプチドをトリプシンを用いたアセトリトリル/水系で合成した。とくに、Kのみからなるジおよびトリペプチドの合成について詳細な検討を行い、酵素濃度およびアミド基質の濃度を適正に制御することにより、目的物の収率を向上させかつその収率を長期間維持できることを見い出した。本研究は、わずか4種の酵素により多種のオリゴペプチドが構成できることを示した。これは、バイオプロセスが指向する少量多品種生産系が構築できたものといえる。
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