研究概要 |
淡水魚の調理において,古くから行なわれている甘露煮と鯉こくを取り上げ,淡水魚の調理において問題となる点を探り,淡水魚の調理の嗜好性の向上を目的として実験を行なった。そして次の結果を得た。 1.ニジマスの甘露煮における素焼きの効果 (1)養殖ニジマスの甘露煮は,調味料を加えた煮汁で煮る前に素焼き処理を行なうことが多い。この処理を行なった魚から調製した甘露煮は,生魚をそのままで調製した甘露煮よりも,魚肉の肉質が硬く,においは生臭さが少ないことが官能検査によって示された。 (2)素焼き処理は,魚から煮汁中への魚肉タンパク質の溶出を減少させ,脂肪の流出を抑制し,煮汁中への調味料の浸透がよくなることが蛍光色素を用いた加熱後の蛍光顕微鏡による観察によって示された。 (3)素焼き処理によって,ニジマスの肉質は硬く,かつ肉が砕け易くなった。また骨は加熱時間が長くなると軟化した。皮は素焼き処理によって硬くなるので,長時間の加熱で皮が切れにくく,素焼き処理を行なったニジマスでは,肉の身崩れが起きにくいことが示された。 2.鯉こくの嗜好性における加熱時間と調味料の影響 (1)鯉こくの調理に用いられる清酒と味噌を加熱中のどの段階で加えることが嗜好性の上から適当かを調べてみると,清酒は加熱最初から加え,味噌は加熱の最終段階で加えたものが好まれた。 (2)鯉こくの加熱時間は,骨とうろこをやわらかくするのに10時間を要し,この間に肉は硬さを増し,煮汁の中に魚肉タンパク質が溶出して,旨味成分も増加していることが示された。 (3)煮汁へのコラ-ゲンの溶出は,皮,うろこからがもっとも多く,皮からは短時間で,うろこと骨からは長時間を要した。 (4)加熱方法は,常圧加熱では7から10長時間を要したので,加圧加熱を行なうと時間は短縮されたが,肉が軟らかくなりすぎて好まれなかった。
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