研究概要 |
核融合炉工学について重要な課題の1つである燃料サイクルの確立については、ブランケットにおけるトリチウムの生産とその有効な回収が必要である。固体増殖材料については、特に表面反応についての研究が遅れており、その機構については末だ明らかにされていない。本研究では固体増殖材料の表面反応機構を、(1)原子炉高温照射下トリチウム回収実験、(2)炉外での交換反応等の実験及び(3)モデル化研究の組み合わせにより明らかにすることを目的とした。(1)「弥生炉」を用いての照射下トリチウム回収実験では、スイ-プガスの化学組成を変化させた実験を行なった。He+H_2Oスイ-プガスの場合、トリチウム表面滞在時間はスイ-プガス中H_2O圧力のー1/2乗に比例した。He+D_2Oスイ-プガスの場合のトリチウム表面滞在時間はHe+H_2Oの場合の1.4倍であった。これらのことより、表面における-OTと-OH(-OD)との再結合反応が律速と結論された。He+H_2スイ-プガスの場合は、2つのLi_2Oサンプルについて行なった。表面酸素濃度が高い試料では、表面滞在時間は水素分圧の-1/2乗に比例した。このことより表面に解離して存在するHとOTとの結合律速と考えられた。一方、表面酸素濃度が低い試料では、水素分圧の-1乗に比例するとともに、反応速度も大きくなり、表面TとH_2との直接交換反応によるものと結論された。(2)outーofーpile実験では、表面に吸着されたHTOのH_2,H_2Oを含んだスイ-プガスによる脱離反応を調べ、いずれの場合にもH_2、あるいはH_2O圧の1/2乗に速度が比例することを示し、inーsitu実験の場合と対応した。また、D_2,D_2Oを吸着させた後、含H_2スイ-プガスで脱離実験を行ない、HD,D_2の放出挙動を詳細に調べた結果、一部D_2として直接脱離する成分のあることが判り、系の酸素ポテンシャルが低い場合にその割合は大きくなった。以上のことより、表面における反応をある程度モデル化することができ、それが酸素ポテンシャルによって影響されることを示した。
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