研究概要 |
カエルの卵は受精後不可逆的な発生運命の決定,分化を経て多様な細胞群から構成される形態を成して行く。初期発生の過程における重要な決定はいずれも母性発現であり,卵形成のかなり初期から卵の中に情報物質として存在すると考えられる。アフリカツメガエルでも卵形成段階ですでに初期発生において重要な役割を持つ物質が勾配または局在性を持って存在することを想像させる。本研究の目的はこのような物質の第一候補としてタンパク質を考え,その局在性および発生に伴う分布の変化の解析を試みた。 1.卵黄顆粒蓄積前の卵母細胞の細胞質分画を抗原とした解析。細胞質タンパクを抗原としてモノクロ-ナル抗体を作製した。得られた抗体を用いて卵巣内の種々の発生段階の卵母細胞の薄切組織切片に対する免疫組織化学反応により検索を行った。 (1)卵母細胞の発生段階における出現時期。卵形成期を卵黄蓄積前(初期)と,動物半球に色素が多く存在し始める迄(中期)とそれ以後(後期)に分けて抗原の出現時期を調べた。今回得た抗体により認識される抗原は大半が全ての卵形成期を通じて存在することがわかった。しかしあるものは初期には検出されず後期になって検出された。また逆に初期に検出されていたのに後期には検出されなくなったものもあった。 (2)後期卵母細胞内での局在性。後期の卵母細胞では卵黄顆粒が植物半球を中心に存在し,巨大な卵核胞が動物半球に偏って存在している。色々な抗体の染色部位を調べた結果,ほぼ半数の抗体は細胞質に均一に分布していたが,残りはいずれも局在性を示していた。これらの局在性を示すものは将来の体軸決定の際の情報物質と考えられる。 2.成熟卵の105,000×G上清分画を抗原とした解析。この上清タンパクを抗原としてモノクロ-ナル抗体を製作した。
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