配分額 *注記 |
6,400千円 (直接経費: 6,400千円)
1992年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
1991年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1990年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
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研究概要 |
地球上の植物を進化学的な視点から見たとき,細胞核に含まれているDNA量(genome size:ゲノム容積)が表現型に対して影響を与え自然選択にかかったのではないかと考えられている.たとえば緯度の高い地方にはDNA含量の高い植物種が多く存在しているというように.本研究はゲノム容積を人為的に変動させることにより,形質(とくに量的形質)の変化をもたらすことができるかどうか,また育種における変異作出法として利用できるかどうかを明らかにする目的で行われた. イネの人為4倍体の集団に数世代にわたってガンマ線を照射することにより,2倍体に復帰する個体が得られる.この個体を無照射で世代を更新すると,一部の個体は後代に多様な変異を分離することが分かった.これらの個体を系統として生育させ,核に含まれるDNA量を測定したところ,原品種のDNA量よりは有意に増減していることが分かった.最大の系統は最小の系統の約25%も多いDNA量をもっていた.日本在来のイネ品種においてもDNA量(ゲノム容積)に変異がみられたが,変異幅は2倍体復帰個体の後代系統のそれより狹かった.2倍体品種の照射によってもゲノム容積の変動が誘発されるが,原品種より小さい方向に変異する割合が大きく,2倍体復帰個体から得られた系統では大きい方向に変異する傾向が強い点で異っていた. 誘発されたゲノム容積の変動がイネの諸形質とどのように相関しているかを確認するために,1990,1991,1992年の3ヶ年にわたって形質の調査を行った.草姿,穂長,粒形,粒重,穂数など収量とも密接に関係している形質において,在来品種群や2倍体品種の照射によって得られた突然変異系統群とは異なる相関関係を示すことが分かった.しかし,各々の形質とゲノム容積の間には明確な相関が得られなかった.ゲノム容積の変化は遺伝子システムの作り変えと切り離せないと考えられる.
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