研究概要 |
ソバの起原に関するこれまでの定説は1世紀も前にド・カンドルによって提唱された中国北部ーシベリア説である。野生の祖先種については何も述べていない。 ソバの野生祖先種とその起原地を探る本研究の結果、次のことが明らかとなった。 (1)5度にわたる中国南部、3度にわたるインド、ネパール、ブータンへの探索調査の結果、ソバの野生種は主として中国の雲南.四川.貴州省に自生しており、F.cymosum,F.gracilipesの2種だけが例外的にチベット東部,ヒマラヤ地方にも自生している。 (2)上記探索の過程で、ソバ属の新種を3種四川省雲南省で、またソバに近縁であるが自家和合性のF.autotropicum,形態的にソバの野生祖先種だと考えられるF.esculentum sop.ancestralisを中国雲南省永勝県で発見した。 (3)F.esculentum sop.ancestralisはソバと交雑できる唯一の野生種であり,形態学的生理生態学的にもソバの野生祖先種であろう。 (4)新しく発見した種も含め、ソバ属各種を形態、アイソザイム、葉緑体DNAの変異にもとずいて分類を試みた。どの分類も結果はほば一致した。ソバ、ダッタンソバに近縁で野生祖先種となりうる野生種は、ソバでは私の発見したF.esculentum ssp.ancestralis,ダッタンソバではF.tataricum ssp.Potaniniでけである。 (5)ソバは雲南省西北部金沙江流域で、ダッタンソバは四川省西北部の山岳地帯で、それぞれの野生祖先種から、おそらくいずれも彝族によって裁培化されたものであろう。従って、ド・カンドルの説は改められなければならない。
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