研究概要 |
水稲に対する雑草害の発生予測や診断技術の開発に必要な基礎データを得る目的で、埋土雑草種子量、雑草の発生消長や発生条件と水稲の生育・収量との関係などを調査した。実験は水稲の乾田直播栽培(耕起,不耕起)と慣行移植栽培を設けて比較した。 1.作物・雑草の競合要因に関与する雑草群落の特徴 (1)供試圃場は10数年間除草剤を連用して雑草の発生を完全に抑制していた水田であったが、実験開始前に埋土雑草種子を調査したところ、水生、湿生雑草を主体とする16種類の水田雑草種子が検出され、依然として大きな埋土種子集団を形成していることが確認された。 (2)圃場に発生した冬雑草は11科28種であった。水稲直播田には延20科40種の雑草が発生し、移植田に比べて明らかに多かった。また不耕起区は耕起区よりも多かった。主要雑草はイヌビエ,タイヌビエ,アゼガヤ,コゴメガヤツリ,タカサブロウ,アメリカアゼナであった。 (3)直播区の雑草は乾田期間に発生するもの、乾田期間と湛水後に発生するもの、湛水後に発生するものに類別でき、生態的特性が異なった。 2.雑草の発生条件と雑草害の発生診断 (1)雑草害は雑草発生量と群落内の構成草種に対応した関係が認められ、放任区の水稲減収率は直播区では80〜95%、移植区では約50%であった。 (2)直播栽培において雑草害を回避できる播種後の除草必要期間は播種後約60日であった。また播種後無除草でも雑草害が発現しない期間は播種後35〜50日間であった(湛水直前〜湛水後15日項まで)。 (3)野生ヒエによる雑草害は播種後75日前後の時期では発生本数よりも草丈との間に高い相関があり、野生ヒエの草丈が10cm程度以下では発生本数とは関係なく、減収が回避できた。この結果は野生ヒエの草丈や発生本数が雑草害の診断や防除対策の指標になりうることを示唆した。
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