研究概要 |
いもち病菌の類縁関係を明らかにするために,わが国山門郡で同所的に栽培されてきた,キビおよびアワの種子と,これら植物に寄生しているいもち病菌を各地より収集した。 1.宿主範囲:イネ科植物7族31種に対して接種したところ, 1)キビ菌の宿主範囲は広いが,イネ・アワ・シユクビエに病原性はなかった。また,日本産キビ17系統に寄生性分化が認められなかった。 2)アワ菌は宿主範囲が狭く,イネ・キビ・シコクビエニ病原性はなかった。また,日本・中国産アワ6系統に対して寄生性分化が認められた。 2.交配型:シコクビエ標準交配型菌株との交配により, 1)日本産(5県)キビ菌39菌株中26菌株は交配型aで,A型は存在しなかった。 2)日本歩(6県)アワ菌29菌株中6菌株は交配型A,9菌株はa型であった。 3.交配能:1)キビ菌としコクビエ菌の交配で子のう胞子を形成したが寄型であった。イネ・アワ菌とは交配不能であった。2)アワ菌はシコクビエ菌,コムギ菌と交配可能で,一部発芽可能の子のう胞子を形成した。イネ菌とは一部の組合せで子のう穀のみ形成した。アワ菌相互の交配はできなかった。 4.子のう胞子形成過程における核・染色体の行動:1)キビ菌メシコクビエ菌では相同染色体の一部に不対合がある模様である。2)アワ菌Xシコクビエ菌では遅滞染色体の出現率は27〜46%,ブラジル産コムギ菌とは24〜35%で,イネ菌メシコクビエ菌の70%よりは低くかった。 以上より,キビ菌とアワ菌は,宿主の栽培環境が互に類似しており,世界的にみて同所的に生在しているにもかかわらず,寄生性は完全に分化しており,異なる系統とすべきであると結論した。
|