研究概要 |
移動能を欠く植物が、植物に栄養素を依存している微生物や動物と動的平衡状態を維持して共存している仕組みの根本には、植物の防御物質として、二次代謝産物が重要な機能を果していると考えられる。本研究では、生体異物に対する植物の潜在的対応様式を探査し、その機能に係る二次代謝産物の構造や作用様式を解明しようとした。 [1]有系分裂阻害型のベンズイミダゾール系殺菌剤に解毒作用(抗MBC作用として検出)を示す化合物をタデ科植物から5種類得た。emodin(1),α-tocopherol(2),5-methoxy6,7-methylenedioxyflavone(3),3,5-dihydroxy-4-methylstilbene(4),2,6-dimethoxybenzoginone(5)。 [2]アンスラキノン類,ナフトキノン類の抗MBC活性を比較検討し、1より活性の大きいものとしてlapachol(2-hydroxy-3-prenylnaphthoquinoneを見出した。 [3]フラボン類の構造と抗MBC作用の相関を調べ,3より高活性のものとして、無置フラボン及び5-methoxyflavoneを見出した。 [4]抗MBC作用物質の作用様式解明実験用に ^<14>C-MBCを調製し、MBC感受性菌から分離したチュウブリンとの結合性を確認した。この結合性に、ベンズイミダゾール系殺菌剤thiabendazoleが明らかに拮抗作用を示す条件下、抗MBC物質1や3はほとんど影響を与えないことが分った。(MBC=カルベンダジム,ベノミルやチオファネートメチルの活性本体) ベンズイミダゾール系の殺菌剤がチュウブリンとの相互作用によって抗菌活性を発現することから、抗MBC物質もチュウブリンと相互作用を示すのではないかと予想された。しかし、[4]の実験結果は、現段階では抗MBC物質が、MBCとチュウブリンの結合性を低下させることによって解毒作用を示している訳ではなさそうであることを示唆している。この点に関しては、さらに詳細な検討が必要と思われる。
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