研究概要 |
本年度の研究目標はカワラタケにおける安定した形質転換法の確立と形質転換体の遺伝子解析による遺伝子導入の確認と発現の検出である。まず,カワラタケの導入体として安定したプロトプラストが必要である。本実験ではサッカロースで浸透圧を調整し,OSSMY培地で培養すると,通常の1%NOVOZYMEとCELLULASE ONOZUKAの処理によって1〜2%の再生率を得た。また,組換え体のスクリーニングのためのG418の感受性レベルの実験では,プロトプラストの再生はGENETICINの濃度25mg/lで,カワラタケの菌系の生育は100〜150mg/lで抑制され,200mg/lで完全に抑制することが出来た。調整したプロトプラストをポリエチレングリコールを用いる常法により,形質転換した。導入プラスミドはpHN134で,これはG418に対する耐性を付与出来る性質を持つ。そこで再生されたG418耐性株がAΦ(G418耐性遺伝子)の導入による形質転換体であるかどうかを調べるために,PCR法とサザンブロットを行った。PCR法では数種の形質転換体に574bpの増幅したAHPI断片を見出すことが出来た。また,数種のG418耐性株にサザンブロットを行い,遺伝子導入の有無を検定した。プローブにはAPHIのXhoI〜HindIII 0.5Kbpの断片を用いたが,ハイブリダイズするバンドが認められた。これらの事実はG418耐性株にほぼ確かにAPHIが染色体に導入されていることを示している。他方,発現ベクターpLPTにligE(β-エーテラーゼ遺伝子)を挿入したpLPT-LEベクターを用い,カワラタケの形質転換体の作出を行った。まず,この遺伝子を保有しているかどうか確認するため,サザンブロット分析を行い導入を確認した。さらに発現を調べるため,形質転換体のβ-エーテラーゼ活性を調べたが検出されなかった。
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