研究概要 |
Campy lobacter jejuniは、ヒトの食中毒としてその汚染が公衆衛生上きわめて重要な問題であるが、家畜、イヌ、ネコなどの腸内に生息し、特にニワトリでは腸内に高い菌数、検出率で生息している。そのため、鶏の食肉用の加工処理の過程で腸内容物からの汚染が起こりやすく、鶏肉のC.jejuni汚染の割合も高い。食肉への汚染防止には、まずニワトリ腸内へのC.jejuniの定着を阻止することが重要である。その方法の一つとして抗菌剤が使用されるが、その使用方法に制限があり、休薬期間中にかえって汚染を広めてしまうことにもなる。C.jejuniの汚染は個体がと、また飼育場ごとに異なり、腸内定着には、腸内菌叢との関係が強く示唆されている。 本研究では、ニワトリの腸内菌叢を人工的にコントロールすることによりC.jejuniの腸内定着を阻止する方法を検討した。その結果は次の通りである。 1.生菌製剤の一つであるBecillus subtilisを野外で飼料中に0.2%、0.5%混ぜて投与したところ、投与1週間でC.jejuniはニワトリ腸内より排除された。 2.B.subtilisやB.cereusの生菌製剤をニワトリ実験感染系を用いてC.jejuni排除能を検討したところ、十分な抑制効果は見られなかった。 3.C.jejuniがフリーなコロニーの成鶏の盲腸内容物を無菌マウスに投与したところ、マウス腸内にニワトリの腸内フローラとほぼ同様のフローラを構成させることができ、ニワトリで優勢菌種であるBifidobacterium,Eubacterium,Bacteroidaceae,Peptococcaceae,Clostri-diumはマウスの腸内でも同様の菌数で定着した。 4.ニワトリフローラマウスにC.jejuniを投与したところ、C.jejuniの定着は阻止された。しかし、ニワトリ盲腸内容物のクロロホルム処理したもの(芽胞のみ生残)、10^<-6>まで希釈したもの、EG寒天培地に嫌気培養したものをかきとり投与された無菌マウスでは、C.jejuniを排除できなかった。 5.ニワトリフローラマウスの糞便よりStreptococcus,Enterobacteriaceae,Clostridium,Bacteroi-des,Eubacteriumを計8株分離し、無菌マウスに投与して作出したノトバイオートマウスではC.jejuniは排除できなかった。 今後さらにニワトリフローラマウスより菌を分離して、C.jejuniが排除できるノトバイオートマウスを作出し、マウスでの結果をもとに無菌ニワトリにフローラを投与してC.jejuniを排除できるフローラを完成させる予定である。
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