研究分担者 |
斉藤 篤志 帯広畜産大学, 畜産学科, 助教授 (10002263)
亘 敏広 東京大学, 農学部, 助手 (50220950)
後飯塚 僚 東京大学, 農学部, 助手 (60205581)
河野 迪子 東京大学, 農学部, 助手 (70092202)
鈴木 直義 東京大学, 農学部, 教授 (10003071)
中山 裕之 東京大学, 農学部, 助教授 (40155891)
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研究概要 |
本研究は犬のバベシア症の原因であるB.canisについて諸外国株と我国の株間の差を検索し,その病原性あるいは薬剤耐性などとの関連性を検討することを目的としたが,まず基礎的な検索をマウスのB.microti(ドイツ株)とB.rodhainiについて以下の点を平成2〜3年の2年間検討した。 1).宿主の免疫応答:パベシア可溶性抗原により感染マウスの脾臓細胞(とくにT細胞)は増殖反応を示した。また免疫マウスの脾臓細胞は感染防御御効果を示し,この作用はIgGおよびT細胞抗体で消失した。一方,過免疫マウスの脾臓細胞の移入では感染防御効果は認められないものの,各種の抗体で前処理すると効果の発現が観察された。またこのうち,とくに抗Lgtー2.2抗体処理で感染防御効果が著明であった。これらのことから,バベシア感染では宿主の防御反応に脾臓細胞,とくにT細胞が重要であることが判明した。B.microtiとB.rodhainiの脾臓内リンバ球サブポピュレ-ションの比較では,Thyー1陽性細胞数がB.microtiで有意な高値であった。一方L_3T_4陽性細胞数/Lytー2陽性細胞数の比ではB.rodhaini感染で感染初期の増加が観察されず,またその減少が早期に観察され,両者の感染経過の違いはT細胞のうち,とくにサプレッサ-細胞の抑制によるものと考えられた。 2)糖代謝関連酵素アイソザイムパタ-ン:B.microtiのmolat dehydragenase活性はB.rodhainiに比較して著明に高く,糖の代謝系が両者で異なる可能性が示唆された。またloctati dehydrogenaseのアイソザイムパタ-ンで両者に差が認められ,B.microtiとB.rodhainiは遺伝子レベルで異なる可能性が示唆された。 以上のように,マウスのバベシア症の原因であるB.microtiとB.rodhainiには宿主の免疫応答に差が認められ,さらに酵素アイソザイムにも差が認められることが判明し,犬のバベシア症の原因であるB.canisにおいても,株間に相違が認められるものと推測された。
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