研究概要 |
1)H,K-ATPaseの精製:様々なdetergentを用い可溶化を試みた。その中で、n-Dodecyl-β-D-maltosideが最も良く、0.05%の濃度で、粗膜画分での活性は50-70%残り、超遠心でそのうち約30%が上清にきた。高塩濃度溶液処理と、pH調整を行い、すこし比活性をあげることができた。2)局在に関する検討:セリウム沈澱法による組織化学的検討は、反応生成物が上皮細胞頂側膜に見られたが、特異的な阻害剤ウワバインで阻害されるという結果が得られず、現在のところはっきりした結論は得られていない。以下で述べる抗ペプチド抗体を用い免疫組織化学を行いつつある。3)H,K-ATPasecDNAのクローニング:大腸粘膜cDNA libraryを作成し、ラットNa,K-ATPaseα1断片プローブとしてスクリーニングを行った。ラットNa,K-ATPaseα1ともラット胃H,K-ATPaseともよく似ているが、それらとは明らかに異なったcDNAが得られた。得られたcDNA塩基配列は、4242塩基からなり、144の5'末端非翻訳配列と996の3'末端非翻訳配列があった。3'末端はPoly(A)構造になっていた。AUGの翻訳開始コドンから終止コドンまでの塩基配列より推測されたアミノ酸配列は、1033個のアミノ酸からなるものであった。推測されたアミノ酸配列は、この蛋白が、P一型膜輸送ATPase-員であることを示した。特にNa,K-ATPase及び胃H,K-ATPaseとは、互いに60-70%の相同性をもち極めて近縁の関係にあることを示した。推測されたアミノ酸配列をもとにペプチドを合成し、抗ペプチド抗体を作成した。これを用いImmnoblotを行った。その結果、クローニングされた蛋白は、遠位結腸にのみあり近位結腸にはないこと、Na,K-ATPaseとは明らかに異なること、が明らかになった。
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