研究概要 |
細胞外からのシグナルであるホルモン,神経伝達物質,細胞増殖因子などが形質膜に到達し,その部位に存在するそれぞれの因子に特異的な受容体を刺激すると,細胞内に多様な活性因子が産生される。これら細胞内情報伝達物質の中で,細胞内に低濃度で存在するカルシウムイオン(Ca^<2+>)は,第2メッセンジャーとしての地歩を確立して,種々の生理的,病態生理的反応に関与していると考えられている。Ca^<2+>の細胞内における作用はCa^<2+>結合蛋白質を介して作用していると示唆されるている。本研究では,Ca^<2+>作用の伝達因子として,脳内に豊富に存在しているCa^<2+>/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMキナーゼII)に焦点をしぼり,培養細胞系で,種々の刺激因子に反応し,活性化されることを細胞薬理学的に調べた。CaMキナーゼIIは,自己燐酸化反応を受け,酵素活性が,Ca^<2+>/カルモデュリン依存性から非依存性になる。Ca^<2+>/カルモデュリン非依存性活性の上昇は,酵素活性化反応の指標になっている。PC12細胞,ニューロ2A,3Y1細胞,C6細胞,NG108-15細胞はいずれも,抗CaMキナーゼII抗体に反応して,免疫染色された。未分化のNG108-15細胞を用い,ブラジキニン(BK),高K^+刺激に反応するCaMキナーゼII活性を調べた。BK刺激後10秒で非依存性活性は約2倍に上昇し(第1ピーク),30秒後には1.5倍のレベルにとどまり維持された(第2ピーク)。細胞外のCa^<2+>を除くか,Ca^<2+>チャネル阻害薬を投与すると,第1ピークは不変で,第2ピークのみが抑制された。高K^+は刺激後10秒で活性を認め,第2ピークを維持した。これらの結果は,第1ピークはIP_3による細胞内,第2ピークは細胞外からのCa^<2+>動員による酵素の活性化反応と考えられた。無傷の培養細胞で受容体を介する薬物反応が酵素活性の変化として把握され,細胞内Ca^<2+>レベルに運動していることが明らかにされた。
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