研究概要 |
1.NIH3T3細胞mRNAを鋳型として合成したcDNAを人為的に過剰発現させるプラスミドライブラリ-を作製し,それを活性型ヒトHーras遺伝子でトランスフォ-ムしたNIH3T3細胞に導入し,形態学的に正常復帰(veversion)した細胞株をスクリ-ニングした。その結果,約100種の正常復帰細胞が得られたが,その中から先ず,軟寒天中コロニ-形成能,ヌ-ドマウスでの腫瘍形成能が著しく低下した株Rev6ー4を選び,二次正常復帰株を得た後,組み込まれているcDNAをPCR(ポリメ-ラゼ連鎖反応)法を用いて増幅した後クロ-ニングした。 2.cDNAの構造解析の結果、正常復帰株Rev6ー4では,ATRー依存性RNAhelicasep68の遺伝子がアンチセンスの向きに過剰発現された事により正常復帰がおこっている事が示唆された。その結果,内在性p68mRNA量の低下が認められた。クロ-ン化したRev6ー4cDNAをアンチセンスの向きに過剰発現する事により、ras癌遺伝子でトランスフォ-ムしたNIH3T3細胞の軟寒天中コロニ-形成能力,ヌ-ドマウス腫瘍形成能力,及び,培養飽和細胞密度等が低下する事が確かめられた。 3.p68のfullーlengthのcDNAを単離しセンスの向きにNIH3T3細胞中で過剰発現された所,形態学的にはフォ-カス形成が認められたが,ヌ-ドマウスでの腫瘍形成は認められなかった。現在,p68の抗体を作製し,p68の生理的機能,特にp68がrasの下流で働く癌遺伝子であるかどうか更に解析中である。 4.Rev6ー4以外に,正常復帰株二つからPCR法によりcDNAを単離した。この二つのcDNAは,p68遺伝子とは異る蛋白質をコ-ドしており,現在その構造解析,及び,その正常復帰をひき起こす能力について解析中である。
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