研究概要 |
我々は動物ジアシルグリセロ-ル(DG)利用酵素としては初めて、80KDGキナ-ゼのcDNAクロ-ニングに成功したが(Nature,1990)、この結果Ca^<2+>結合部位であるEFハンドと亜鉛フィンガ-を併せもつ、新しい機能タンパク質の存在が明らかになった。 1)80KDGキナ-ゼのEFーハンドの機能 精製酵素を用いて検討したところ(JBC,1991),本酵素は高親和性の(Kd=300nM)Ca^<2+>結合タンパク質であり、モル当たり2モルのCa^<2+>を結合すると、ホスファチジルセリン(PS)による活性化を受けることがわかった。さらに大腸菌とCos7細胞での欠失型、短縮型cDNA発現実験を行なった(BBRC,1991)。Ca^<2+>非存在下ではEFハンド領域は自己阻害部位として酵素によるPS結合を妨げているが、Ca^<2+>結合時にコンフォメ-ション変化を起こし、この結果DGキナ-ゼのPS結合領域が露出する。 2)ラット80KDGキナ-ゼ ラット80Kキナ-ゼcDNAをクロ-ン化し、in situ hybridizationと免疫組織染色を行なった(投稿中)。本酵素はTーリンパ球に大量に発現しているが、脳ではoligo dendrocytesに限局して発現しており、ミエリンの成熟度に一致した発現調節を受けることが分かった。 3)ヒト血小板DGキナ-ゼ ヒト血小板より3種類のDGキナ-ゼを精製し、いずれも80K酵素とは免疫学的に区別されることを示した。(JBC,1990)。 4)検討中の課題 80K酵素のヒト遺伝子に関しては、転写開始点を決定し、5'領域のプロモ-タ-活性をCAT assayにより検討している。亜鉛フィンガ-の機能を調べるために、点変異導入酵素をBaculovirus/Sf9細胞で発現中である。Tーcell hybridoma刺激時のDGキナ-ゼの動態を免疫的手法で検討中である。
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