研究概要 |
本研究は,ホモロガスリコンビネ-ションに基づくgene targeting法in vitroでT細胞ハイブリド-マに応用し,抗原認識におけるT細胞シグナル伝達系に関与する抗原レセプタ-複合体や,それに解合するテロシンキナ-ゼなどの分子の機構を解明することを目標とした。標的としたのはCD3ζ.7鎖およびチロシンキナ-ゼfynである。CD37鎖はこれまでゲノム遺伝子構造が未知であったが,本研究でCD3ζ.7は最後のエキソンのみを異にするalternative splicingによって形成されることを発見した。そこで各々の特異的エキソンにneo^γ遺伝子を入れ,3端にTK遺伝子を入れたポジティブ・ネガティブ選択のできるベクタ-を作製した。これらをT細胞ハイブリド-マに導入して,片側アリルに変異を導入したクロ-ンを樹立した。ζ鎖targeting細胞は,通常のmRNA,ζ蛋白,細胞表面T細胞レセプタ-/CD3複合体がほとんどなくなり,抗原刺激にも反応しない機能的に不活性になった。この結果から,ζ鎖が抗原によるT細胞活性化に不可欠であることが,突然変異株でなく,特異的変異株を用いて証明できた。更に,片側アリルのみの不活性変異にもかかわらず,ζ蛋白がほとんど産生されないことから,片側が“Active allele"であると考えられた。両アリルへの変異導入のために,neo^γとhygro^γの両ベクタ-を準備したが,片側の変異で不活化が誘導できた事は,in vitro targetingの有用性を示している。TCR複合体に解合するfynについては,neo^γ/ジフテリア毒素遺伝子を用いる選択方法により試みたが成功に至っていない。更にin vitro targetingの成功を基礎に,CD3ζ,CD37ベクタ-を導入したES細胞の樹立,ES由来の形質を有するキメラマウスの作製に成功し,現在,これらの文配でgernilineに変異を持つマウスを作製している。
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