研究概要 |
甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH),副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH),成長ホルモン放出ホルモン(GHRH),黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH),ソマトスタチン(SOM),などの視床下部ホルモンのほか,ストレス関連ホルモンである副腎皮質刺激ホルモン(ACTH),エンドルフィン(End)やエンケファリンなどの鎮痛オピオイドの,マクロファ-ジ,ナチュラルキラ-,リンパ球の活動に対する影響を調べた。 1)マクロファ-ジの抗がん作用に対する影響。少量のインタ-フェロン(IFN)と細菌内毒素(LPS)で弱く活性化したマクロファ-ジの抗がん作用を,鎮痛オピオイドとCRHは高めることができた。この際,前者の作用はそれらのアンタゴニストであるナロキソンで抑えられるが,後者の作用は影響をうけない。その他のホルモンについても調べたが,顕著な効果は認められなかった。 2)ヒトリンパ球と単球のIFNαおよびIFNの産生におよぼす影響。CRHはリンパ球のIFNα産生を上昇。βーEndは単球のIFNαとリンパ球のIFNーα産生を上昇。Enkは単球のIFNα産生を上昇。副腎皮質ホルモン(合成品デキサメサゾン)は,すべてを抑制。 3)リンパ球増殖応答に対し,TRHおよびTRHによって刺激放出される甲状腺刺激ホルモンは,増強的に作用した。 4)TRHは,in vivoでの抗体産生にほとんど影響を与えなかったが,トレランスの誘導を妨げた。 以上,いわゆる中枢系ホルモンは免疫応答に種々の影響をおよぼしているが,実際の生体内での作用,免疫系のもっているホルモンは外束性のものか内因性のものか,それらの受容体を介しての免疫系細胞の応答機構など,これから解明すべき問題である。
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