研究概要 |
γ/δ型T細胞の細菌感染防御機構における役割を検討するためマウスを用いてMycobacterium bovis,Listeria monocytogenes及びSalmonella choleraesuis感染症でのγ/δ型T細胞の動態,Vレパートアー,特異性ならびにその機能を解析した。 1.Mycobacterium bovis(BCG)感染症:BALB/cマウスの腹腔内に致死量下のBCGを投与すると,各臓器内菌数は感染4週目でpeakとなり,その後徐々に減少した。腹腔内や末梢リンパ組織でのγ/δ型T細胞の比率は感染1週目に最も増加し,4週目では減少した。感染1週目に出現するγ/δ型T細胞はポリクローナルであり,Vγ1,2,4,6/Vδ3,4,5,6を発現していた。これらのγ/δ型T細胞はBCG Iysateに反応してγインターフェロン(IFN)及びインターロイキン2(IL2)を産生した。 2.Listeria monocytogenes感染症 C3H/Heマウスに致死量以下のListeriaを腹腔内に投与して,腹腔内に出現するT細胞の動態を調べたところ,感染3日目にγ/δ型T細胞が増加し,感染7日目ではα/β型T細胞が増加した。菌は感染3日目でpeakに達し,10日目には完全に検出できなくなった。 感染早期に出現するγ/δ型T細胞はおもにVγ1/Vδ6を発現しており,BCG由来の65kdHSP(熱ショック蛋白質)に反応して,γIFNを産生した。抗γ/δ型TcR抗体で前処置したマウスでは感染3日-5日目での臓器内菌数が有意に増加していた。 3.Salmonella感染症 BALB/2及びDBA/2マウスに致死量以下の強毒株または弱毒株のS.Choleraesuisを腹腔内に投与すると感染3日目にγ/δ型T細胞が有意に増加した。γ/δ型T細胞の増加はIty ^rDBA/2マウスで著しく,また弱毒株で著しかった。このγ/δ型T細胞は,65kdHSP特異的であり,サルモネラ由来のHSP発現量では相関せず,マクロファージの発現する内因性のHSP発現量に相関した。内因性HSPを認識するγ/δ型T細胞が感染早期の防御機構に働くものと考えられる。
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