研究概要 |
ヒト、インタ-ロイキン2レセプタ-α鎖(IL2Rα)のトランスジェニックマウス(TGM)を用いた一連の解析から,正常マウスのリンパ球におけるシグナル伝達性1L2R(β鎖)の発現が,CD8^+αβ,γδ,およびCD3^-NK細胞に限られ,大部分のCD4^+のβT細胞には認められないことが示された。前者の正常休止期リンパ球ま,IL2刺激によって増殖期に入ると共にいくつかの特聴徴的な膜表面構造の変化を示す。1つはLy5(CD45)のマイソフォ-ムの変化で,休止期T細胞は殆んど低分子型Ly5を発現するの対し,IL2活性化に伴い高分子型(β細胞型)のアイソフォ-ムを再現するに至る。mRNAの解析よりこれは,mRNAのスプライシングの変化によることが示された。T細胞活性化に伴うCD45の細胞外ドメイン構造の変化の生理的意義については今後の課題に残された。もう1つは,β7抗原の消失である。β7は今回我々が遺伝子クロ-ニングした新しい膜フォ-スファチジルイノシト-ル結合型蛋白で,PIーPLCによって膜より切断遊離される。静止期リンパ球の殆んどはβ7を発現するがIL2等の活性化により速かに細胞表面より遊離されることが示された。これはすでに知られているPI結合抗原の中でも,唯一Mel14と並んで認められるユニ-クな特徴で,リンパ球活性化初期現象,例えばPIーPLCの活性化解明の有力な手掛りを与えよう。最後に,IL2によるT細胞増殖に関与する分子を探索する過程で,新しいIL2誘導性遺伝子(Spaー1)をクロ-ニングした。Spaー1は,IL2等のリンパ球増殖性シグナルに伴って選択的に誘導されるリンパ系細胞に特異的遺伝子で,分子量約35KdのDNA結合性蛋白をコ-ドしている。キナ-ゼリン酸化モチ-フを豊富に有することから,一連の増殖性シグナル伝達の下流にあって,リンパ球細胞増殖の調節に関与する可能性が示唆され,さらに分子生物学的解析を進める予定である。
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