研究概要 |
滋賀県安土町(人工約1万2千人;1990年現在)において,満65歳以上の在宅高齢者全員を対象に1990年〜1992年にかけて訪問面接調査を行った。対象人口のうち,入院・入所中41名,長期不在者51名を除く1,398名が訪問調査の対象で,1,289名(訪問調査率92.2%;拒否75名,留守34名)について調査し,以下の結果を得た。 1)在宅高齢者における性年齢別ADLの実態:基本的ADL(食事,着替え,入浴,排泄,失禁,屋内移動)要介護者は,尿失禁のみ16%と高かく,特に女性に高った。他は2〜4%であった。失禁以外の総てに自立している割合は96%で,性差はみられなかった。女性で年齢と共に要介護者が増えていた。手段的ADL(調理,電話,整理,屋外歩行,買い物,階段,交通の利用)の要介護者は4〜16%で,調理は男性に多く,歩行,階段,交通は女性に多かった。手段的ADLの完全自立者割合は74%で,女性の後期高齢者で低下が大きかった。 2)ADL自立の有無と生活の満足度,生きがい:食事,排泄,食事支度,電話以外のADLは満足度と有意な関係がみられた。また,食事,屋外歩行以外のADLは生きがいの有無と有意な関係が認められた。 3)生きがい・満足度に影響する要因:在宅高齢者の生活満足度は,居住年数10年以上,住居の使い勝がよい,健康と感じている,家族とよく会話する,家族への不満がない,家族仲がよい,老人会活動によく参加する,自由になるお金に満足している,生きがいがある,不安・悩みがない者で高かった。また,生きがいは家族との会話,家族仲,家庭や地域の役割,近所づきあい,老人会,趣味などの有無と関係していた。 4)世帯の状況と身体的,精神的状態,生活状況:ADL自立度は独居者で高く,同居者で低かったが,非常に健康と感じている者は同居者に多かった。独居者の生きがいや満足度は低かった。
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