研究概要 |
ラット分離潅流肝を用い,高感度カメラを接続した蛍光顕微鏡下に,肝微小循環単位を観察し,各種の蛍光プローベの蛍光強度を解析し,酸素ストレスの肝障害発生機序における意義について検討した。先づ,四塩化炭素肝障害において,過酸化脂質感受性蛍光プローベとしてdichlorofluorescin(DCFH)を用い,DCFHが過酸化脂質と反応して生じるDCFの蛍光像を解析し,終末肝静脈域(Zone3)から酸素ストレスが生じることを明らかにした。このモデルにおいて細胞障害のプローベとしてpropidium iodide(PI)の核染色像は,DCFの上昇より遅れてみられ,またcytochrome P-450の阻害剤であるSKF-525Aはこの双方の反応を抑制することが明らかとなった。次に潅流速度を通常の25%に低下させた低潅流性虚血障害においても同様の実験を行ない,DCFの上昇はZone2にみられ,Zone3へと拡がること,そしてP1の増悪もZone2からZone3に遅れてみられることを明らかにした。またミトコンドリアの機能の指標としてrhodamine123(Rh123)を用い,Rh123の低下がZone3に出現することを明らかにした。この変化は,PGE_1やキサンチン酸化酵素の阻害剤であるアロプリノールの添加により抑制されることが示された。細菌内毒素(LPS)による肝障害におけるnitric oxide(NO)の関与について検討した。LPSの添加によりRh123によりみたミトコンドリアの機能低下がZone3に強くみられたが,NOの合成阻害剤であるL-N^G-monomethyl arginineの添加により抑制されNOがLPSによるミトコンドリア障害に関与していると考えられた。これを遊離した肝細胞,Kupffer細胞において検討したところ,Kupffer細胞が同時に存在する時にのみ肝細胞のミトコンドリア機能低下が観察され,LPSにより活性化されたKupffer細胞より放出されたNOが,細胞障害に関与している可能性が示された。
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