研究概要 |
平成2年度は人工内耳におけるスピ-チ・プロセッサの作動調査並びに最適プロセッシングの予測のための加工音声を作製した。 1)まず、人工内耳の子音に対する音声情報処理と刺激電極選定方式を追求するため、電極選択信号続み取り装置を作製し、/p,t,k,b,d,g,h,s,m,n,r,j,w/の各子音について電極遷移パタ-ンの計算値を求め、実測値と比較検討した。 2)子音の聴取改善のためには子音のどの部分をより良く伝えればよいかを検討するため、音声加工装置ソフトを作製した。この主眼は、これを用いて子音のいわゆる雑音バ-ストを加工し、エネルギ-増幅した加工音声、持続時間を増加した加工音声を作製し、加工子音に対する正答率を原音声の正答率と比較して改善点を明らかことである。 平成3年度はこれらの装置を用いて研究し、次の事を明らかとした。 1)人工内耳は子音の各構音様式の特徴を一応は送っている。ただし、摩擦音、半母音、鼻音は理に叶っているが、破裂音は特異であった。 2)人工内耳患者の子音の聴取は人工内耳の電極遷移パタ-ンからの予測と合致しないものがあり、これは人工内耳を通した入力と脳の語音知覚機構との整合の遅速によるものと推定された。 3)音声加工のうち、正答率改善に有効なのはエネルギ-増幅のみで、しかも電極遷移パタ-ンが理に叶った子音の一部にのみ見られた。 4)鼻音、半母音は正答率に高い寄与度を持つことを明らかにした。 5)聾にしたネコでの実験で、脳幹反応を指標とした入出力曲線の傾斜はラセン神経節細胞の残存率が高いと急峻であることが判明した。 以上から人工内耳の改良点は、破裂音の分析・コ-ド化をより精確にすること、鼻音nasal murmurを増幅することにあると結論された。
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