研究概要 |
平成2年度までに家兎眼の上脈絡膜内へ内腔をもつシリコンスポンジを埋設移植して,上脈絡膜腔の静水圧を安定して測定できる実験系(シリコン埋設法)を確立した。平成3年度はこの実験系を用いることにより上脈絡膜腔圧と同時に眼内圧を測定しながら,種々の病態を負荷して,脈絡膜剥離発生と直接関係するいくつかの因子を明らかにした。 1.眼内炎症のない,正常眼正の家兎眼でも,猿眼と同様に上脈絡膜腔圧が眼内圧より常に低いことを明らかにした。 2.脈絡膜剥離発生の初期段階と考えられる静水圧差の減少や消失を低眼圧を負荷した家兎眼で確認した。さらに低眼圧を長期間持続した家兎眼においては静水圧差の逆転現象(脈絡膜剥離発生)が確認された。 3.経強膜冷凍凝固術による急性脈絡膜炎を惹起させることによっても上記と同様の結果が得られ,圧差の逆転現象は脈絡膜の急性炎症と低眼圧を同時に負荷することにより,より高頻度に起こることが明らかになった。 4.臨床実験では,脈絡膜剥離の出現・消大前後で前房蛋白量が急激に増加・消失することを確認しており,脈絡膜剥離の眼内液循環動態は上記家兎眼における圧差逆転現象の結果と一致することを見い出し,報告した。 5.実験的脈絡膜循環障害(過度の渦静脈締結や強膜内陥術)により,正常〜高眼圧においても圧差逆転現象が生じる可能性が示唆された。
|