研究概要 |
家兎および人角膜,輪部上皮の培養条件を,種々の基本培養液を用いて検討した。この結果,MCDB153培養液とF10培養液を混合してアミノ酸組成を変化させ,培養液中Ca^<2+>濃度を0.03mMに調整することにより,血清無添加で培養を行うことが出来た。さらにこの基礎培養液にEGF,hydrocortisone,insulinを添加した増殖用培養液を用いて家兎角膜上皮細胞を凍結保存し,再び常温に戻して長期間培養(約15世代まで)させることに初めて成功した。 人胎盤から精製,化学的に再重合させた4型コラ-ゲンシ-ト上で角膜上皮を培養し,上皮層を形成させた。この上皮細胞層は増殖能力を保持し,電顕的にも健常な細胞小器官が認められた。このシ-トが結膜組織の侵入を阻止する効果があることを臨床例で実証した。現在,このin vitroで形成した上皮層を移植できるよう検討している。 角膜上皮細胞の細胞周期分析を行うフロ-サイトメトリ-法を開発した。この方法をin vitroとin vivo角膜上皮細胞に応用し,上皮細胞の細胞周期や角膜上皮細胞に対するEGF点眼効果を検討した。 角膜上皮形成術の長期効果を研究し,モ-レン潰瘍に対する有効性を実証した。また,結膜移植を表層実質植と併用して,結膜上皮細胞が角膜実質を基質として再生した場合の上皮性状変化が臨床的に検討した。臨床結果は良好であり,上皮スペキュラ-マイクロスコ-プと上皮層のバリア-機能の評価から,人結膜上皮細胞は角膜実質が健常であれば,角膜上皮細胞となりえる可能性を認めた。 in vivoにおける結膜上皮の分化を基質との関連で検討した。その結果,角膜実質内に挿入された結膜上皮は,経時的に角膜上皮に特有なkeratin(AE5)を示すようになり,結膜上皮から角膜上皮への形質転換の可能性が示された。
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