研究概要 |
唾液中には,50種類以上の酵素,免疫抗体および生理活性因子などが含まれている。これらの物質は、総合的に反応し口腔内を一定の環境に維持している。しかしこれらの物質の多くは唾液腺を構成する種々の細胞のうちどの細胞において合成分泌されるかは良く理解されていない。また唾液中に含まれるこれらの高分子物質の多くは、腺細胞中の分泌顆粒によって細胞外に放出・分泌されるが,分泌顆粒中には複雑な内部構造が観察されるが,この内部構造と高分子物質の局在は一部の酵素を除いてほとんど分っていない。本研究の目的は,高分子物質(糖蛋白質)の局在を免疫細胞化学的に,腺房細胞内に観察することにより,糖蛋白質の合成過程と分泌顆粒内にパックされるメカニズムを解明することである。 アミラーゼ,プロリンッチプロティン(PRP性),ヒスタテンの抗体を用いて免疫細胞化学反応を行うと、これらの蛋白は,ゴルジ装置,未熟分泌顆粒(濃縮空胞),分泌顆粒中に局在が認められたが,トランスゴルジネットワーク(TGN)には観察されなかった。一方,アグルチニンやペルオキシダーゼは,トラン側ゴルジ嚢,TGN,濃縮空胞および分泌顆粒中に局在が観察されたが,ゴルジ装置のシス側ゴルジ嚢,メディアル嚢には認められなかった。この結果,唾液腺腺房細胞内における糖蛋白質の合成過程には,ゴルジ装置のすべてのゴルジ嚢を経由して分泌顆粒中にパックされる過程と,TGNが合成過程の中心となるケースの2つの過程が存在する事が判明した。今後はさらに種々の糖蛋白質のポリクローナルおよびモノクローナル抗体を作成し,どの様な種類の糖蛋白質がどの様な過程を経るか研究する必要がある。
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