研究概要 |
硬組織形成のメカニズムを解明するために本研究では分子生物学的方法を用いてエナメル芽細胞、象牙芽細胞、骨芽細胞の分化マ-カ-であるアメロジェニン、エナメリン、コラ-ゲン、コラゲナ-ゼ等の構造や遺伝子発現の調節機構について、抗体、cDNAプロ-ブ等を用いて多角的に解析していこうとするものである。これまでの研究から以下の新知見を得た。(1)ウシ・アメロジェニンのRNAプロ-ブを用い、ラット歯胚におけるアメロジェニン遺伝子の発現をin situ hybridization法により解析した。その結果、アメロジェニン遺伝子は前エナメル芽細胞において既にわずかではあるが発現を開始し、基質形成期で最大になり、成熟期の極初期まで続いていることがわかった。また、抗体を用いた研究では成熟期のかなり後まで反応がみられたので、これは基質からのアミメロジェニンの吸収によるものであろうと考えられた。(2)ウシ・エナメリンをエナメル基質より精製し、その1次構造を解析した。その結果、N末端より23番目までのアミノ酸配列が分かった。現在、このアミノ酸配列をもとにしてエナメリンをクロ-ニング中である。(3)骨コラ-ゲン代謝のKey Enzymeであるコラゲナ-ゼ遺伝子の骨芽細胞様細胞における発現の調節機構を解析した。その結果、TPA,FCS,ILー1β等によりその発現が誘導されたが、強力な骨吸収促進因子であるPTH,1,25(OH)_2D_3によっては誘導されなかった。(4)ウシ乳歯歯根吸収組織におけるコラゲナ-ゼmRNAの発現をin situ hybridization法により調べ、破歯細胞で最も強く発現しており、その他単球ーマクロファ-ジ系の細胞、線維芽細胞、セメント芽細胞にもコラゲナ-ゼmRNAの発現がみられた。(5)象牙質リン蛋白質(Phosphophoryn)の性質を詳しく調べた結果、これまでプロテア-ゼに抵抗性であるといわれていたが、脱リン酸することにより、プロテア-ゼ感受性になることが分かった。
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