研究概要 |
電気生理学的には薬物注入法などにより、甘味、苦味応答の発生機構は推定されているが、実際にどのような二次伝達物質の働きで味細胞内情報伝達がなされているのかを解明するために、ラジオイムノアッセイ法を用いて、マウス舌を蒸留水および各種味溶液で刺激を行い、血管潅流でグルタ-ル固定、舌を切りだし、ホモゲナイズして各舌中に含まれる^<125>|ーcーAMP,^<125>|ーcーGMP,^3HーIP_3を測定した。その結果、cーGMPは蔗糖刺激によって蒸留水刺激の約2倍に増加するが、他の味刺激ではほとんど変化しないことが、cーAMPは蔗糖刺激でわずかに増加するが他の味刺激とほとんど変らないことが、IP_3は苦み刺激で蒸留水刺激の約2.5倍に、また食塩刺激では約0.8倍、蔗糖刺激では約2倍というような変化をすることが解った。これらの測定結果には舌の筋組織等に含まれる分も多量に存在しているので、今回は単一乳頭(味雷)を用いてさらに細かい測定をした。そこで、ラジオライムノアッセイ法を用いて、マウス舌を蒸留水、蔗糖液、食塩液、キニ-ネ液、塩酸液刺激を行い、その際に乳頭を切り出してcーAMP,cーGMP,IP_3の濃度を測定してみた。舌は各溶液で刺激しながら血管潅流によりグルタ-ル固定し、乳頭を切りだし、ホモゲナイズして各標本中に含まれる^<125>|cーAMP,^<125>|ーcーGMP,^3HーIP_3を測定してみた。その結果、cーGMPは蔗糖刺激によって蒸留水刺激の約2倍に増加するが、他の味刺激ではほとんど変化しないことが解かった。cーAMPは蔗糖刺激でも蒸留水でも他の味刺激とほとんど変らないことが解った。IP_3は特にキニ-ネ(苦み)刺激で蒸留水刺激の約2倍に、しかし食塩刺激、蔗糖刺激では蒸留水の場合とほとんど変化のないことが解った。従って蔗糖応答発生にはcーGMPがまた苦味応答発生にはIP_3が関与しているらしいことが強く推定される結果が得られた。
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