研究概要 |
平成2年度は,まず被験者1名の筋電図記録を用いて校正を行い記録条件の適正化を行った。ついで,決定された記録条件下で数回の予備実験を行い,条件を確認するとともに,デ-タレコ-ダをパ-ソナルコンピュ-タに接続し,AーD変換プログラムおよび分析プログラムを自作し,動作の確認を行った。以上の結果,記録分析システムが完成し,顎口腔系に機能異常を認めない個性正常咬合者22名(正常者群)および欠損を有しない顎口腔機能異常者11名(異常者群)について24時間の行動下における咀嚼筋筋電図を記録した。同時に被験者に1日の行動記録とその時刻を記録させた。 平成3年度は,記録したテ-プを再生して積分することにより筋活動量を算出し,1日を(1)睡眼時(2)食事時(3)その他の3相に分類し,以下の項目について分析を行った。(1)各相の筋活動量,(2)各相の単位時間あたりの平均筋活動量,(3)各相の筋活動量が全体の筋活動量に占める割合,(4)各相の単位相時間あたりの平均筋活動量の全体の単位時間あたりの平均筋活動量と比較した場合の相対値,(5)食事時の平均活動量の50%および100%をスライスレベルとした場合の,睡眠時およびその他の相におけるスライスレベル以上の筋活動量が生じる時間の割合。 その結果,正常者群と異常者群との間にほぼ類似した筋活動パタ-ンが認められた。しかし,相違点として異常者群では正常者群と比較して食事時の筋活動量が小さく,相対的に睡眠時の筋活動量が高いという極めて興味深い傾向が認められた。 今後さらに,デ-タを集積することにより,行動科学的な新しい顎口腔機能評価法が開発可能であることが強く示唆され,この評価法の確立によって,潜在的な顎口腔機能異常者の早期発見の可能性が高まった。
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