研究概要 |
最近,各種心疾患で心筋β受容体サブタイプの比率が変わることが知られてきた.また,β_1受容体に選択性の高いdenopamineが新規経口強心薬として臨床的に用いられている.従来,心筋のβ_1受容体を介する作用は,isoproterenolやnorepinephrineを用いて検討されてきたが,β_2受容体やα受容体の刺激作用もあるため,常に問題を残してきた.特異的なβ_1活性薬が見出されれば,受容体サブタイプから収縮に致る過程の研究や,カテコ-ルアミンの多面的作用を整理,理解するのに役立つ.本研究は,1)denopamineのカテコ-ル誘導体Tー0509が選択的β_1完全活性薬であることを明らかにし,研究用の試薬として確立すること.2)Tー0509の心収縮力増加の機序,特にCa^<2+>電流及び細胞内環状AMPのコンパ-トメントと心収縮の関係を検討し,受容体サブタイプの機能面における役割を明らかにするものである. 本研究により下記の成果が得られた.(1)摘出器官と受容体結合実験からTー0509は現在知られている最も活性の高い選択的なβ_1完全活性薬である.(2)モルモット心筋で,強心作用と密接に関係する心筋細胞下環状AMP画分を見出した.この画分は,Aキナ-ゼ活性についても強心作用とよく相関した.(3)モルモット心室筋では、β完全活性薬の強心作用とCa^<2+>電流増加作用はβ_1受容体を介するとして説明できる.(4)β完全活性薬をラットに慢性投与すると耐性が発現するが,従来用いられてきた用量は極めて高く,β受容体サブタイプの耐性に対する影響を調べるには不適当であることを示した.また、非選択的β活性薬よりβ_1活性薬の方が耐性が発現しにくい可能性を検討中である。(5)イヌの冠状動脈のβ_1受容体がin vivoで血管拡張に寄与しているかどうかにつき検討した.生理的条件でも軽度ながらβ_1受容体を介する直接拡張作用が存在する可能性を示した.
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