研究概要 |
補体系膜制御因子MACIFは1988年に我々がヒト赤血球に発見し,1989年にはcDNAクローニングにも成功した.なお1989年に生理機能は不明のままCD59抗原と命名された膜蛋白質がcDNAクローニングされ,MACIFと同一であることが判明した.そのために最近ではCD59と呼ばれるようになりつつある.MACIFに関して蛋白質の精製,構造決定,cDNAクローニングの研究において,我々がトップを走っていたので,ゲノム遺伝子解析もかなり有利な状況にあると考えて,本研究を計画した.さらにMACIFと蛋白質に相同性を示すマウスLy-6抗原群が遺伝子クラスターを形成しているので,ヒトでもMACIF遺伝子と相同性をもつ遺伝子がクラスターを形成している可能性があり,この検索から新しい膜蛋白質を発見することを期待した. ヒトゲノムライブラリー(EMBL3,シャロン4Aなど)からMACIFcDNAをプローブとしてクローニングを行い,数個の陽性クローンを得た.それらをM13ファージにサブクローンニングして,プローブとハイブリダイズするものの塩基配列を決定した.その結果,大部分のシグナル配列を含む第2エクソン,シグナル配列のC末端3残基と成熟蛋白質のN末部位31アミノ酸残基を含む第3エクソン,およびその後の成熟蛋白質C末部位46アミノ酸,GPIシグナル配列と3'非翻訳配列からなる第4エソクンの3つのエクソン構造を決定できた.このエクソン構造はマウスLy-6のC抗原のものとよく似ているが,イントロンはMACIFの方が数倍長いという特徴をもっていた.この結果は両者が同一遺伝子ファミリーを形成することを強く示唆する.現在,第1エクソンの解明を試みているが,第2エクソンから20kb以上離れているらしく,ユニークな遺伝子構造をもつ可能性がある.
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